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本一冊から得られる価値が大きくなっている

おととい、「デジタル化時代の幼児の学び」というシンポジウムを見に行って来ました。
こどもちゃれんじ25周年記念シンポジウム」の第1回目として催されたイベントです。

開始時間を勘違いしていまして、20分ほど遅れて会場に着いたときはMITメディアラボ副所長の石井裕教授による基調講演の真っ最中。

基調講演のタイトルは「世界学習/異文化競創を通して」。

インターネットを通じて世界中の人々とアイデアを交換・フィードバックしあい、さらに深めていくことができる「世界学習」の時代、最も価値があることは、どれだけ知識を持っているかではなく「今まで誰も問わなかった問い」を初めて問うことにある。だからこれからの学びの目指すところは、あらかじめ用意された答えを覚えるのではなく「本質的な問い」を見つけることのできる力を獲得することにある。そのためには…、というようなお話でした。

私自身は石井教授の話をナマで聞くのは3回目だったし、デジタル化時代の学習、ソーシャルラーニングといったテーマは普段から考えていることもあったので、いつもながらの情熱的な語り口とスケールの大きな話にワクワクさせられはしたものの、新しい発見はあまりなかったです。

すごくハッとさせられたのは、後半のパネルディスカッションでの話でした。

紙の本も電子書籍も、本としての「本質」は変わらない

話の流れの中で電子書籍の話題になったのですが、石井教授は「紙か電子かというメディア(形態)は本質的な違いではない。本の本質はそれが伝える情報、メッセージであるから」というようなことをおっしゃいました。

これは、電子書籍の「書籍」をどう捉えるによっては全然納得できない人もいるでしょう。

「書籍」を従来型の「文章によって構成されるもの」と捉えれば、それが縦書であろうと横書きであろうと、紙に印刷されていようとスクリーンに表示されていようと、本質的なメッセージは変わらない。

ただ、「新しい書籍」には電子書籍ならではの表現で、そのメッセージを伝えようとするものがあっても良いはずです。例えば、あるページを開くと音が流れ出す(単なるBGMではなく、その音なくしては表現できないメッセージを伝えるために)という電子書籍は、文字の部分だけ紙に印刷して製本しても同じ本とは言えないからです。

ただ、石井教授は「従来型の書籍」の話をされていたと思うので、今回はそういう意味での「本」について考えてみると、確かに紙か電子かというのは本質的な問題ではない。

それは私自身も十分分かっているつもりでいたものの、石井教授の話を聞くうちに「あ、なんか思い込みの罠にはまっていたかも」と気づいたのは、「電子書籍と新しい学び方との関係について」です。

たとえば「電子書籍なら、書き込んだアンダーラインやメモを他の人と共有して、ソーシャルラーニングが実現できる」そんな風に考えていたところがあったんですが、それって本質じゃないな、と。

確かに、電子書籍はソーシャルラーニングを手助けするための便利な機能を付けることができます(そして私は、電子書籍のそういうところにすごく期待しています)。

だけど、それはあくまで「容れ物」の便利機能であって、コンテンツとしての本はたとえ紙であっても、元々ソーシャルラーニングの可能性を備えているんですよね。

ソーシャルラーニングの範囲が増大した現代

考えてみれば、インターネットのない時代だって、友だちとの会話や読書会といったところで、自分と他人の読み方を共有し、議論をすることはできた。それは立派なソーシャルラーニングですよね。

そしてインターネットのある現代は、それがもっと大きな範囲でできるようになった。それが電子書籍ではなく紙の本であっても、です。
自分がどこにアンダーラインを引いたか、どんなメモを書いたのか、TwitterやFacebook,あるいは読書コミュニティの掲示板などを使って共有すればよいのですから。

よく本を読むと世界が広がる、と言いますが、その広がり方はいろいろあります。

たとえば
(1)一人で本を読んでそれを味わい、自分の中に深い世界を作っていく、
(2)人の読み方を知るということで、気づかなかった視点を得る、
(3)そして、自分の読み方を人に伝え、他者からフィードバックを得ることで、さらに深い読み方に到達する…、
という風に。

インターネット以後、(2)(3)ができる範囲が大きく広がり、それこそ「世界学習」が容易にできるようになった。
そこにはものすごく大きな意味があると思います。

昔に比べて現代は、たとえ同じ紙の本を買ったとしても、そこから得られる価値がものすごく大きくなっているんだ!
それが、今回のシンポジウムに参加して、一番うれしい発見でした。

それと、「幼児の学び」ということについて言えば、ソーシャルラーニング、つまり他者とのインタラクションで学ぶということの最初の「他者」として、保護者が重要な役割を担うんだな、という気付きもありました。